くろかわゆうすい [ 湧水 ]
「東京の名湧水57選」のひとつ。黒川清流公園として整備されている湧水。
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詳細
黒川湧水は日野台地の東南の崖から湧出する未だ水量豊富な湧水です。
「黒川清流公園」として整備され、公園敷地を含め周辺は東豊田緑地保全地域として森林が保全されています。
かつては、ワサビが栽培される山葵田として利用されていたそうです。ワサビの栽培には清流が必要であり、さらに浅い水深で水がゆっくりと流れていくことが山葵田の条件です。
ここは、谷戸地形の場所と同じように、木々が生い茂り、日の当たらない鬱蒼とした暗闇の中に湧水が流れる、じめじめとした湿地帯であったのでしょう。
「黒川」の名前の由来については調べていませんが、清流が流れる川であるにも関わらず、それには似合わない「黒川」という名前で呼ばれていることがそれを表しているのかもしれません。鬱蒼とした森の中に湧出する湧水を「黒水」と呼ぶことがあります。
住宅地では湿地は嫌われます。開発しづらい斜面であるからこそ、東豊田緑地保全地域の森林は残されたのでしょう。公園南側には住宅地が隣接し、かつての「黒川」は暗渠となり、公園に沿うように流れる水路が現在の「黒川」と呼ばれているようです。
つまり、この場所の豊かな湧水のほとんどは人の目に触れることなく棄てられ、許容範囲内の水が水路として流れを作っているようです。
「黒川清流公園」は良く整備された公園らしく、遊歩道も設けられ、「わきみず池」や「親水広場」、「清流広場」、「大池」、「ひょうたん池」など、さまざまに水に親しむ工夫が施された親水公園です。
森林保全地域と住宅地をうまく調和された場所ということもできるでしょう。しかし何か空しさを感じずにはいられません。もちろんやむを得ないことであることは言うまでもありません。私も自分が住んでいる場所のそばに湿地帯があることは嫌です。
評価すべき場所ではあるでしょう。都市化が究極まで進んだ場所では、崖も住宅地となり森はなくなり、湧水は人知れず棄てられるか、埋められて滅失してしまっています。
本来であれば、住みづらい場所はそのまま残し、住宅地として相応しい場所のみを開発すればよいのでしょうが、人口が増え続ける首都圏で、しかも土地を持っているだけでその土地から何も価値を生み出すことがなくても課税されるという現在の税制の中では、これもやむを得ないことでしょう。
保全され湧水が滅失していないことだけでも、とても素晴らしいことだと思います。
現在もこの場所でワサビが栽培されているそうです。「黒川湧水を生かす会」が管理する「黒川湧水わさび園」がそれです。
「何もしないよりは、何かした方が良い」とは、最近気候変動の問題で二酸化炭素排出量を減らすことへの疑問に対して良く返される言葉ですが、この言葉はこの地域で行われている活動に対して贈られるべき言葉だと思います。
大事な湧水が枯渇、滅失することなく保全されていくことを願います。
画像
参考資料
リンク
アクセス
場所:東京都日野市東豊田
JR「豊田」下車、徒歩15分
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