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水紀行 - 千葉その六 久留里の生きた水(久留里の銘水)


久留里駅前 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 久留里に来たのは何度目でしょうか。何度も来たことがある久留里ですが、最後に来たのはおよそ1年前。環境省選定「平成の名水百選」に選定されてからは初めての訪問です。
 「平成の名水百選」選出されたことを知った時には、驚くと同時にとても残念でした。我が愛すべき名水の里が観光地になってしまうかもしれない。
 久々に丸々1日空いた早春の日曜日。急に思い立って久留里へと向かいました。早春とは言え、晴れた日曜日の午前中。観光客がいっぱい居たらどうしよう。選定後1年経った久留里は変わってしまっているのか。そんな事を思いながら、しかしやはり名水の里への旅は胸を躍らせます。
 JR内房線「木更津駅」から久留里線のディーゼル車に乗って「久留里駅」に降り立ちました。
久留里駅前

久留里駅舎  上総行政センター

 久留里駅に着いて駅舎を出たとたんです。行政センターがありません。目の前に広大ともいえる空き地が広がり、久留里は変わっている真っ最中であることを着いて早々さっそく教えてくれました。おそらくは「名水の里」にふさわしい建物に建て替え中なのでしょう。
 久留里駅周辺は大きく変わろうとしているようです。君津市の都市再生整備計画によって久留里駅周辺整備計画が進められているそうです。西側の空き地には駐車場が整備され、東西を結ぶ通路の建設が予定されているようです。国道410号線は現在、久留里市場の西側にバイパスが建設されている最中で、おそらくそのバイパスから久留里駅西側へアクセス道が建設されるのでしょう。東西通路建設とともに、久留里駅舎の建替えも検討されているようです。
 駐車場は観光客用のためのものでしょう。違法に道路や私有地に駐車している方々が目立ちますが、これにより少しでもそのような行為が減少すれば良いのですが。

行政センター裏の建築中建物  久留里城下マップ

 行政センターの南側には建ったばかりのような蔵造りの建物がありました。久留里らしい建物です。これは旧JA倉庫だそうで、改築の真っ最中。「仮称・観光交流センター」として整備される予定だそうです。
 駅前にある生きた水の里久留里城下マップ。今回は今まで行ったことがない久留里城址へも向かいます。
行政センター裏の取水施設

行政センター裏の取水施設1  行政センター裏の取水施設2

 上総行政センターと旧JA倉庫の間に、駅から一番近い取水設備があります。井戸水はそばにある池へと注ぎ込んでいます。周辺の空き地も含めて総合的に開発すれば、かなりの観光施設となりそうですが、はてさてどうなることでしょうか。

久留里市場仲町 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 久留里市場は、その名の通り正確には城下町といっても武家屋敷があった場所ではなく、そのそばにあった町人街です。現在、武家屋敷があった場所は農耕地になっており、城下町のなかで町民の町のみが生き残っています。やはり長い目で観れば、実際に価値を生み出す人々の方が強いということでしょう。
 その久留里市場は、上町、仲町、下町、新町に分かれています。久留里駅から久留里城址に向かって歩き始めるとまず仲町へと迷い込みます。
久留里市場仲町

君津からの道  仲町の水1

 写真の狭い道は、君津市から久留里に向かう道が久留里街道にぶつかる場所です。一度、君津市側からこの道を通って久留里に来たことがありますが、道はとんでもない山道で、以来車で向かうときは木更津市側からの道を使っていました。
 この狭い道は両方通行だったのですが、さすがに今回訪れてみると、久留里街道側からしか入れない一方通行の道になっていました。

 この道を通って仲町へ。井戸があちこちにあり、水が大量に流れる音が聞こえてきます。余った水を小櫃川へと流しているのでしょう。

仲町の水2  仲町の水3

 表通りから裏通りへ入ると、至るところに水がありました。まさに水の町の面目躍如といったところでしょうか。
 よどんだ水溜まりを目にしなかったのは、たまたまなのでしょうか。町の中の水は流れ出る先を必ず用意しておかなければなりません。どの水場もきれいにされている所を観ると、かなり周到に水が管理されているように感じました。よどんだ水溜りを目にしなかったのは、たまたまではなく、おそらくあったとしてもごく僅かなものでしょう。

吉崎酒造 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 久留里には、名水の里らしく、いくつかの造り酒屋があります。久留里市場上町にある吉崎酒造もそのひとつです。吉崎酒造では、名水を使って作られた日本酒を購入することができるほか、洋館や蔵造りの建物を観ることもできます。
吉崎酒造

吉崎酒造1  吉崎酒造2

 吉崎酒造敷地内の駐車スペースにはバスが2台止まっていました。1台のバスのフロントガラスには「都市計画研究会」の文字が。「平成の名水百選」に選定されて1年。やはり、他の市町村からも注目されているのでしょう。
 米蔵は明治39年、酒蔵は明治末頃に建てられたそうです。同じ敷地には昭和に入って建てられた洋館もあります。特徴的な建物が数多く残されている久留里市場。ここ吉崎酒造はもちろん、久留里に訪れたら路地裏に足を踏み入れてみることをお勧めします。表情豊かな通りが見つかることでしょう。

吉崎酒造3  吉崎酒造4

 水を愛でる意匠を凝らした水の流れがありました。他に井戸がたくさんあるので、ここで取水する人はいないでしょうが、もし都会にこんなものがあったら訪ねる人でいっぱいになるでしょう。羨ましい限りの環境です。
 寛永元年(1624年)創業という吉崎酒造は千葉県下一の老舗だそうです。

久留里城址 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 築城後、三日に一度21回、雨が降ったという伝説から「雨城」という別名を持つ久留里城。  戦国時代後期、北条氏と対立した里見氏の本拠地として有名ですが、築城は史実では真里谷武田氏とされ、その後明治に入り取壊されるまで、大須賀氏、土屋氏、黒田氏などの城主を迎え入れます。
 本丸がある峰の頂上までの道は、主尾根と東尾根の二つの道がありますが、今回は主尾根の道を通って本丸、再建された久留里城を目指しました。
久留里城址への道

久留里城入口  森林体験交流センター

 久留里街道から久留里城址駐車場へ向かう入り口。こちらからの道は城山隧道を通って駐車場へ向かう新しく造られた道で、古来よりの道は大多喜へ向かう県道32号線側からの道です。
 駐車場には「君津市森林体験交流センター」があります。「自然の中で森林に親しみ、森林・林業についての情報を得たり、様々な林業体験をすることができる施設」だそうです。

久留里城下町跡1  久留里城下町跡2

 本丸への道はかなり急な坂道です。主尾根と東尾根の間の谷は深い森林です。
 本丸下から眺めたかつての城下町は街道沿いの家々と農耕地になっていました。かつての武家屋敷らしいものは全く見当たりません。
君津市立久留里城址資料館

上総堀り模型  水道木管

 主尾根の途中に「君津市立久留里城址資料館」があります。屋外に「上総堀り模型」と明治中期に久留里市場に埋設された「水道木管」が展示されていました。

 上総掘り - 姉崎郷土資料館
 http://www.ne.jp/asahi/anesaki/ichihara/tenji/meisan/kazusabori/kazusabori.htm
久留里城天守閣

久留里城天守閣  梅の花

 久留里城址の天守閣は昭和52年に再建されたものです。

 久留里城 - 埋もれた古城
 http://www.asahi-net.or.jp/~ju8t-hnm/Shiro/Kantou/Chiba/Kururi/index.htm

久留里神社 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 さて、久留里城址探訪の後は、いよいよ水を巡ります。久留里街道、久留里城址入口から少し南にある久留里神社からスタートです。
久留里神社

久留里神社1  久留里神社2

 境内に「御神水」と呼ばれる自然水があります。その水量は豊富でした。

久留里神社3  久留里神社4

 境内の自然水は樋と伝って水路へと注ぎ込んでいます。

雨城庵の井戸 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 久留里神社の北側、久留里城址入口のすぐそばにある通称「雨城庵の井戸」は、公開されている掘抜井戸のひとつで、川名さんという方所有の井戸だそうです。
雨城庵の井戸

雨城庵の井戸  小櫃川旧河道へ注ぐ滝

 一般に開放されている久留里の井戸は、君津市のサイト情報によれば5本あるとのことですが、その中で駐車スペースがあるのはこの「雨城庵の井戸」だけです。車で取水に来られる場合はこの井戸を利用するのが良いでしょう。
 ただ、この井戸での来訪者のマナーはかなり悪いようです。この井戸が開放中止という事態にならぬよう、マナーには気を付けたいものです。
 久留里神社方向からの水路の流れが滝となって小櫃川旧河道に流れ込んでいます。

小櫃川旧河道  崖の竹林

 小櫃川旧河道には未だにたくさんの水が流れ込んでいます。上流からの水はショートカットされたとは言え、そこを流れる水量からは川そのものです。

高澤家の水 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 久留里市場上町にある、人気の「高澤家の水」。一般に開放されている掘抜井戸のひとつです。
高澤家の水

高澤家の水1  高澤家の水2

 この井戸は人気があるようで、いつ行ってもどなたかが取水に来ています。水場は綺麗に清掃されていて、管理が行き届いています。感謝しなければいけません。
 ここには駐車スペースはありません。車の路上駐車も無理なので、車で取水に来られた際は、別の井戸を利用することになります。

高澤家の水3  藤平酒造の井戸

 この「高澤家の水」から少し駅方向に戻った場所にある「藤平酒造の井戸」。こちらの井戸も開放された掘抜井戸のひとつです。

新町の余水用井戸 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 新町通り沿いにある井戸は、余水用井戸と呼ばれています。久留里街道沿いにある掘抜井戸から地下の水道管を通って引水された井戸水です。大多喜方向へ真っ直ぐに延びる道にはいくつもの余水用井戸がありました。
新町の余水用井戸

新町通り  余水用井戸1

 新町通りは、その名の通り比較的新しくできた町のようです。余水用井戸が通りの両側にいくつもありましたが、一般に開放されている井戸はひとつとされています。現に、「取水禁止」という意味合いの注意書きがされた井戸もありました。
 井戸とはいっても、掘抜井戸から引水された水ですから、取水は久留里街道沿いの開放された掘抜井戸で行った方が良いでしょう。

余水用井戸2  余水用井戸3

 しかし、これほどまでに取水設備のある通りを他では見たことがありません。町が独自に整備した水道事業。久留里の人々の心の豊かさが伝わってくるようです。
 独自に始めた久留里市場の水道事業は、国土交通省がいうところの水道事業の中には含まれていないようです。住民の生活を支える水ゆえに、「久留里の生きた水」が汚染されるような事態になることはないでしょう。

久留里市場下町 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 久留里市場の北の端、久留里市場下町交差点まで辿り着きました。
佐久間商店前井戸

佐久間商店前井戸  久留里下町交差点

 「佐久間商店前井戸」は、開放されている掘抜井戸のひとつです。交番前といった方がわかりやすいかもしれません。

 久留里市場下町交差点から久留里駅に戻る道は、久留里街道ではなく裏通りを通ってみました。洋風の建物が唐突に現れます。久留里は「水の里」であると同時に確かに「様々な建物の町」でもありました。

そば処「藤美」 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 久留里駅まで戻り、どこかで遅い昼食を摂ろうと思い、その時頭に浮かんだのが、仲町の路地裏にあるこざっぱりとした蕎麦屋さんです。若い青年が気持ちよく挨拶してくれたことを思い出し、迷わずそこへ向かいました。
そば処「藤美」

そば処「藤美」  そば処「藤美」店内

 そのお店は、そば処「藤美」という名前のお店でした。朴訥としたお人柄の店主さんは、決して能弁ではありませんが、とても素朴な方で真面目にお店を経営されているようです。
 ウェブに写真を載せたいと言うと気持ちよく応じてくれました。
 朝、開店準備をしながら気持ちよく挨拶をしてくれた青年は、聞けば息子さんだそうです。

ランチメニュー  そば処「藤美」入口

 注文したのはランチセット。野菜天せいろ970円とおにぎりがセットで、11時30分から14時まで1,000円で食べられます。彩り豊かで、味も量も満足、お勧めです。ちなみに値段やメニューは、2015年1月の時点のものです。
 久留里駅を出て、行政センター側、左へ真っ直ぐ進めばお店の案内がすぐ見つかるでしょう。

木更津駅 - 水紀行(千葉その六 久留里の生きた水)


 さて、名水の里「久留里」の旅ももう終わりです。
 ちなみに、久留里線は本数が少ないので、電車で訪れた際は、帰りの便の時刻を確認しておいた方が良いでしょう。
木更津駅

久留里線の車両  旧そごう

 JR内房線「木更津駅」まで戻ってきました。帰りに途中下車して「いっせんぼく」にでも寄ってみようかと思っていましたが、もう体力がありません。真っ直ぐに帰ることにしました。
 木更津駅で途中下車して一休憩した後、休日の観光客の中に紛れて帰途へ。名水の里「久留里」ですごした時間は、数日間、私の心に豊かな余韻を残してくれました。

※ 2008年2月 初稿
※ 2015年1月 更新


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